妙な手応えがあった。英霊を呼んだにしては軽くて、かと言ってただの使い魔にしては重すぎる感覚。収束していく魔力を確認するために、そうっとまぶたを開ける。
果たして、そこには、精悍な青年が酷く不機嫌そうに佇んでいたのであった。
「セイバー、千子村正。召喚に従い参上した」
不機嫌そうな表情をくるりと変えて、青年は皮肉っぽく口角を上げた。呆然とする自分はさぞ間抜けに見えたことだろう、と慌てて首を振る。口の中がカラカラにかわいていて、唾を飲もうにも飲めなかった。青年はそんな自分を気に止めるまでもなく左右をゆっくりと見回して、不可解そうに眉を寄せた。
「で、だ。妙な空気の場所だが、一体どういう場所で儂を呼んだんだ」
不快そうな声音。それに少しだけ安堵して、自分は緩やかに苦笑をうかべた。意図が分からない、と言わんばかりに眉をひそめたサーヴァントに向かって口を開く。
「ここは終末世界。終わりかけの世界。俺がお前を呼んだのは、まだ寿命がある世界から聖杯を奪うためだ」
かける願いは一つだけ。
自分は、1度でいいから、青い草原と青い空の故郷を見てみたいのだ。
----------
・オリ主
村正士郎さんを呼んだマスター。聖杯は持っていないが彼の願いが特異点形成のきっかけにもなっている。何かの選択を間違えた世界で滅びつつある世界の住人。一度でいいから青空が見たいという、小さな願いを抱き続けた寂しい人。
・千子村正
変わったやつに呼ばれたなあとか思っている。青空が見たいってのは分からなくもないなと思いつつ、この場所が真っ当でないことも気付いている。できるのなら青空を見せた上でマスターと一緒に還ってしまうのがいいんだけどな、と悩み中。
0コメント